悠久城風の間 blog語り部のささやき

悠久城風の間の語り部 楯よう子のささやき

化け猫の生成

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おら、生まれた時から、与作んち、ねぐらにしているにぁ、にぁ。子猫ん時、ネズミ、怖かったにぁ。ネズミ走るの速えかったども、だんだんネズミ追っかけて、おらもネズミくわえられるようになったにぁ、にぁ。捕ったネズミ、見せると、ばあさん、喜んだにぁ。おら、一生懸命ネズミ捕ったにぁ。ネズミ捕り、おもろくなったにぁ、にぁ。おら、走るの速くなったなあ。どんどん捕って、食ったにぁ、にぁ。

与作んちのネズミ、いねなってしもたにぁ。ばあさん、おらにソバ団子くれたにぁ。そんなもん、うんもねぇにぁ。おら、腹減ったにぁ。うんまいもんが食いたいにぁ、にぁ。

おら、ニワトリ食いたくなったにぁ。ニワトリは、バタバタして、足2本でいいあんばいにネズミより逃げるのおっそいにぁ。ケッコー、ケッコーいうすけ、食ったにぁ。そんでネズミよりでっこくて、うんまいにぁ。おら、食った、食ったにぁ。腹いっぺになったなぁ。うんまいから、もっともっと食いたくなったにぁ。もっともっとニワトリ捕ったにぁ。もっともっと食ったなぁ。隣んちも、その隣んちもニワトリ、捕りに行ったにぁ。おら、腹いっぺになって、また、食いたくなったにぁ。

そうしてよ、毎晩、ニワトリ狩りしていたらよ、ばあさんが与作と話してたにぁ。おらがニワトリ食うすけ、川に捨てるとにぁ。

おら、ばあさん、憎っくくなったにぁ。おら、ばあさん、食いたくなったにぁ。ばあさん杖ついて、3本足でよ、ニワトリより逃げるのおっせえにぁ。そんで、ケッコーも言わんで、おらこと、にらんだにぁ。おら、ばあさん、食ったにぁ。ばあさん、ニワトリよりでっこくて、食うのに三ぃ晩かかったにぁ。

にぁー、うんまかった。腹いっぺになったにぁ。そんで、おら、ばあさんになってしもたにぁ。らくらくして、うちに帰ったにぁ、にあーあー。(化け猫に変身)

 

少し、解説すると、猫がネズミをとるところから、ニワトリをとるところまでは緩やかな変化である。しかし、この間、猫は着実に力をつけていった。遊びながら狩りを楽しみ、身体能力を高めていた。それから、ネズミ肉からトリ肉へと美食となり、栄養状態も格段によくなったから、このことも肉体的変化をもたらした。捕り放題、食べ放題で、次第に、食べることがやめられなくなっていった。

そんな時に、ばあさんが自分を捨てる計画を話しているのを耳にした。

これは、大きな生存の危機である。人にも、まして猫にも、大きな変化をもたらすのは、このような生死にかかわる危機的状況に直面した時である。それまでに蓄えられた力が一気に働きだす。ばあさんを食べることによって、ばあさんを自分の血肉とし、さらに猫はパワーアップ。ばあさんの姿、声をも得て、とうとう化け猫と呼ばれるに至った。

 

この世のコロナ禍について。

これまでコロナも小さな変異を繰り返していたのだろうが、ここで一気に大きな変異をとげたのか?どうなのだろう。コロナにとって危機的状況があったのか?

コロナは、猫ほどの意思もない。集合体としての意志、生存への危機感,ヒトへの憎しみなど持ちようがないのだから、やはり気まぐれな小さな変化、偶然の変異の積み重ねを繰り返していただけではないのか?受け手のありようが、今日のヒトの痛手を大きくしたのだろうか?

もっとも、コロナ自体は意志を持たなくても、これを使おうという意志持つものはあるだろう。コロナを危険な道具としてパワーアップさせるのではなく、コロナもいる世界でわたしたちの生活を豊かにすることを目指してほしい・・・

 

令和2年皐月 大雨・雷・洪水注意報の夜・・

 

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2020年5月15日収録 新潟のむかし話「化け猫退治」

こわくてふるえる話 新潟県学校図書館協議会編

https://www.youtube.com/watch?v=OfSHBY6spHs