悠久城風の間 blog語り部のささやき

悠久城風の間の語り部 楯よう子のささやき

2019-01-01から1年間の記事一覧

「灰色の海をカンバスに」

「赤い蝋燭と人魚」は人魚というから、ロマンチックなお話しだと思ってしまう。 しかし、恐ろしい結末が待っていた。 子どもを人間世界に産み落して、幸せにしてあげられなかった母人魚の呪いが、人々の命を海に呑み込ませ、海岸の町を滅ぼさせてしまったの…

「ごんになる」

「ごんぎつね」は、昔、小学校の体育館で行われたおやこ劇場で、人形劇として見たことがある。ひなたの匂いのする子どもらと体育館の床に並んで座る。わくわく感。 その頃は、近所の子どもたちやそのお母さんたちと過ごすひと時が楽しかったのだと思う。 「…

「声出し」

「駆け込み訴え」をいきなり声を出して読んでみた。意外に滑らかに読める。それもそうだ。太宰が大変な勢いで、妻に口述筆記させたものだというし、何しろ駆け込み訴えなのであるから、もともと滑らかな話ことばでできている。「全文、蚕が糸を吐くように口…

「野生のような生きる勇気」

「羅生門」が国語の教科書の定番だと聞いて、わたしは驚いたのだった。当然、高校だと思ったら、中学校だったという人も複数いて、「私、好きでした」と若い女性が言うのを聞くと、なんとなく戸惑ってしまう。明るく清潔な教室。きちんと並べられた机と椅子…

「いるか」

悠久城風の間の扉を開くと、飛び込んでくるのがこの言葉だ。「いるか・・いないか・・・・ゆめみているか」谷川俊太郎のことばあそびから、何とわたしに書を書いてくれる人がいた。わたしには全く思いがけない事だった。ある紙芝居劇場で、参加者みなと谷川…

「その場に身を置くこと」

たとえば、バイオリンの演奏が心躍らせる時、もちろん、その曲の美しさと演奏の巧みさがあるのだが、演奏するバイオリニストをうっとりと眺めているような気がする。感動させることに、バイオリニストの肢体と顔とその動きという視覚からの情報がどのくらい…

「顔出し」

「知り合いの10人が10人とも、顔は出さない方がいいといったよ」 と、鋭い目つきを投げてよこすS氏。 「若くなくて美人でないだろう。おばあさん、見たら、みんなすぐ消すよ」 「花とかのほうがまし。今度やるときは顔は出さないこと」 全く、容赦がない。 …