新潟のむかし話の「ふうふうとんとんいいかん」を読んで楽しくなってしまうのは、なんといっても、和尚さんと小僧さんの食い意地のすごさだ。
和尚さんは甘いものが大好き。小僧が好きなのも知っているが、だからこそ、独り占めして一人でこっそり食べたい。小僧にやらないで一人で食べると、いっぱい食べられるだけでなく、食べることのうれしさ、喜びが倍増するのだ。だから、留守中、頂き物のおはぎを小僧に食べられないようにうまく隠さなければならない。小僧二人が、さんざ探しても、見つけられっこないのだった。和尚さんは一人でゆっくりこっそり食べるために、小僧をうまく言いくるめて早く寝かしつけるなど知恵を働かせる。和尚さんのおはぎへの愛、ごっつおを独り占めして食べることへの熱意、情熱は、はんぱでない。
一方、小僧さんのほうも、いつまでもただ指をくわえてみているわけにはいかない。おはぎにしても、団子、おこわ、餅、甘酒・・みんな、近所のばばや隣村から、「小僧さんにもやってくらさいの」と持ってこられたものなのだから。小僧さんたちにどうぞどうぞと、すぐ食べられるように差し出されたものなら、もちろん小僧さんたちはすぐにごっつおにありつける。この場合は、おいしくておなかがいっぱいになって終わり。
しかし、和尚さんという強敵が小僧さんの分まで搾取するという構造になっていて、これを打ち破るには知恵がいる。いつもおいしいものが差し出されて、好きなだけ食べられる子どもと比べて、この小僧さんたちは、ほっておいては、うんまいものにありつけないのだから、知恵を働かせようとし、このことが、小僧さんたちの知恵の力を伸ばすことになっている。
うんまいものをめぐる和尚さんと小僧さんの息づまる、よだれのたれる攻防。和尚さんにはボケ防止に、小僧さんには知力の発達に役立っていそうである。
ともかく、食い意地が張っていることは一番大切なことである。それがあるから、食べたいのに食べられない時、なんとか手にいれようと懸命に考えて、小僧さんの知力が養われていく。
この健康さに、わたしは楽しくなってしまう。
令和2年弥生 ちらつく雪をながめながらおはぎを食べた
令和からの紙芝居と語り 悠久城風の間ホームぺージ
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Works 旅の声 2020年3月14日収録
「ふうふうとんとんいいかん」新潟のむかし話