新潟のむかし話「はなたれ小僧」の教訓を考えてみよう。
正直貧乏じいさは、乙姫さまからちんこい男の子をもらって来て、年とりの米だの、塩鮭だの、餅だの、着物だのを出してもらった。それからだんだん欲出して、大きい、いい家、田んぼも畑も、米を入れる倉、みそを入れる倉も出してもらった。じいさは、いい暮らしをするようになると、小僧がいつも鼻やよだれをたらしているのが嫌になった。ばあさも小僧にえびのなますを作ってやるのが面倒になっていたから、小僧を追い出した。すると、いい家も、田んぼも畑も倉もいい着物も、あっという間に消えてしまった・・
というお話。
なるほどね。欲張ってはだめね。いくら正直じいさでも、人間は少しいい暮らしができるようになると、もっともっとと、もっと欲しくなるものね。まして、それが、簡単に手に入るとなれば、小僧に頼みますよね。いったん自分のものとなれば、自分のものであることが当たり前になって、ますます贅沢な暮らしに慣れていく。一方、小僧はもらわれてきた時と変わらない。鼻をたらしているし、よだれもたらしている、きったなげなまま。じいさは村の偉い人とつきあうようになると、見苦しいなりの小僧がついて来るのが疎ましい。無理もないか。人間いい着物を身につけるようになると、古い着物なんて嫌だし、鼻やよだれでぐしょぐしょになった着物なんて、とんでもなく恥ずかしい。汚れた着物も恥ずかしいが、そんななりをしているままの小僧が自分の家にいるのが、恥ずかしい。いうことを聞かない小僧を怒って追い出してしまう。
ちょっと待って。じいさま。じいさまは、小僧が家や田んぼ畑、倉、着物出してくれたことを忘れているよ。それらがみんな消えてしまってから、気がついた。残念。遅かった。
じいさは小僧のはなたれが嫌になった。しかし、この小僧のよだれ力・はなたれ力こそが、じいさに富をもたらす力だったのだ。小僧はとんでもないパワーを持っていた。それを表わすのが、よだれやはなたれだった。残念ながら、じいさは小僧の出してくれた品々でいい暮らしを満喫するだけで、その品々を引き出す小僧の力を見ていなかった。品々はどこからともなく出てくるから、神業の力そのものを可視化して見ることは難しいか。ただ、その力は、小僧のよだれやはなたれに現れていた。小僧のよだれやはなたれを多量に出す力、よだれ力・はなたれ力を、もっと肯定的に注目しておいてほしかった。
よだれ力・はなたれ力は生命力そのものを表現するものかもしれない。よだれやはなたれでヒトは病原体から自己を守ってもいるのだから、これが多いことはそれだけ生存に有利である。マスクよりも強力かも。なにしろマスクのない時代をヒトは生きのびてきたのだから。
今、世界に新型コロナウイルスが蔓延してきているという。人口増と人口密度の高まりはウイルスにとって、格好の餌場。領土を得られる。
この国の行政府は緊急事態宣言を出したという。しかし、理髪店を休業要請しようかどうしょうかなどともめていて、どうやら街中に死体が満ちることまでは考えていないようだ。政治家にしてもだれにしても、ウイルスは目に見えず、どの程度の広がりであるかはわからないから、さまざまな意見の集約は難しく、素早い対応とはなりにくい。でも、このもたつきは、悪いともいえないかもしれない。もしかして、もっともらしく手間取っているふうを装いながら、実は我が行政府の頭脳集団は、密かに急がない作戦を行っているのかも？パンデミックの影響をもっとも強く受けるのは高齢者だから、コロナがこれからの高齢化社会の負担軽減に役立ってくれそうだと。
いずれにせよ、人類は地球を荒らしすぎた。
今後、人類はウイルスに住処を譲り渡すことになるのか？少なくとも、繁栄の行き過ぎた部分は刈り取られていくのでは？できたら、これまでの領土を縮小させてもウイルスとの平和共存の道を見つけたい。わたしたちは、今までよりもっと簡素な、もっと穏やかな生活でいいのだから。美食や毎日の大騒ぎや消費を競い合うことは、もうさんざん、やったのだから。
コロナウイルスというのは、時々、姿を変えて、わたしたちに悪いお知らせを運んでくるという。
このたびは、次の静かなステージの幕開けを告げにきたのだと願いたい・・・
令和２年卯月
満開の花の下、祭りはなくても桜弁当
令和からの紙芝居と語り
悠久城風の間ホームぺージ
http://yuukyuujyou.starfree.jp/
Works 旅の声 （やっとこすっとアップロードした)
2020年3月28日収録
「はなたれ小僧」新潟のむかし話
不思議さにひきこまれる話
