悠久城風の間 blog語り部のささやき

悠久城風の間の語り部 楯よう子のささやき

お三はただの飯炊き女ではなさそう

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佐渡はたくさんの物語を秘めている土地だろう。

新潟のむかし話でも「団三郎ムジナとお三キツネの化け比べ」

団三郎はムジナながら、堂々としていて歌舞伎役者のようないい男の雰囲気がする一方、お三はその名のとおり三度の飯炊き女風?蓮っ葉なふうがただよう。

団三郎とお三は、それぞれ化けるのが上手でライバルだが、お三は化けては悪さばっかりする。そして、その悪さをみんなムジナにかずける。団三郎はムジナの親方だから、許してはおけない。化け比べで、お三をこらしめた。

それで島からは人をたらかすキツネはいなくなったという。団三郎親方のとんちのおかげである。

わたしは、団三郎の堂々とした親方としての態度に惹かれるが(こちらが正義の味方だ)、実のところ、お三の方にもっと惹かれる。

これはなぜかというと、わたしは中年男よりも若い女に自分が近いと(勝手に)思っていて、同一化しやすいからなのか?生物学的には、わたしは年齢は若年よりも中年により近く、性別は昨今は問うてはいけないようにもなってきているが、生まれたときは確か女だった。ただ、自分の女性性が失われてきていることの危機感がひそかにあり、この復権を求めようという動きが、お三への支持につながっているのか?

アブラゲをご馳走してくれるという団三郎のあとを、お三は「シナシナと」ついていくのだ。この「シナシナ」もいいが、もっと心動かされるのは、嫁入り行列の真ん中で、きれいに着飾ったお三キツネの嫁さんが、つんとすまして馬にゆられていくところである。

ここのポイントは3つ。①きれいに着飾る②これから嫁になる③つんとすましている

1 については文句なく誰にとってもいいことだ。
2 については、(ふつう)ばばにはできない。だからうらやましい。
3 媚びない自信を持った態度がいい。自分の美しさに自信がなければできない。
わたし自身は①はできる。②は無理だが、不可能とまではいえない③その気になればできそう

なのだから、わたしがお三に惹かれるのは、若い女性性だけではないのでは・・と思う。

ちょっと言いにくいのだが、お三の魅力は、さらに重要なポイントは、人をだますということかな・・・?

団三郎は人の役に立つ化け方をするらしい。一方、お三は悪さのために化ける。化けることが楽しくて自分の好きなことをして、その結果、人を困らせることになるのか、人を困らせること自体を目的として化けているのかは、はっきりしないが・・。

とにかく、わたしは、きれいな若い女+人をだますということに、どうやら心惹かれるらしい。

今からきれいな若い女になることは難しいとしても、人をだますことは、これからのわたしにもできそう・・・

お三どん。女は三度の飯炊きだけしていればいいのか?

表向きは、それでよしとしよう。ただ楽しい人生のためには、人をだますことが必要だったのではと、わたしはあれこれを振り返りながら、思う。

 

令和2年皐月 静かに田植えは始まったが・・

 

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Works 旅の声 

2020年5月2日収録

「団三郎ムジナとお三キツネの化け比べ」新潟のむかし話 

とんちとちえでうーんとうなる話 新潟県学校図書館協議会編

https://www.youtube.com/watch?v=HZgtJ5SpetA