悠久城風の間 blog語り部のささやき

悠久城風の間の語り部 楯よう子のささやき

化け三毛にゃー子の語り

新潟のむかし話2000年「化け猫退治」の伝えるところによると・・・

年とった飼い猫の三毛が、村中のにわとりをとって食うようになり、困り果てたばあさん。せがれに、川にでも捨てるしかないと相談していた。それを聞いていた三毛は、ばあさんを食ってばあさんに化けて、家に上がり込む。気づいたせがれは、村の衆を集めて化け猫を退治した。

となっているのだったが・・・

果たして、三毛は、本当にソバ畑を血で染めて死んでしまったのだろうか?

おら、生まれた時から、与作んち、ねぐらにしている、三毛にぁー子じゃ、にぁ。

子猫ん時、ネズミ、怖かった、にぁ。

ネズミは、 走るの 速えかったども、おら、だんだんネズミ追っかけて、おらがネズミくわえられるようになった にぁ、にぁ。

捕ったネズミ、見せると、ばあさん、喜んだにぁ。

おら、一生懸命ネズミ捕ったにぁ。ネズミ捕り、おもろくなった、にぁ、にぁ。

おら、走るの速くなったなあ。どんどん捕って、食った、にぁ、にぁ。

与作んちのネズミ、一匹もいねなってしもた、にぁ。

ばあさん、おらにソバ団子くれた、にぁ。

そんなもん、うんもねぇ、にぁ。

おら、腹減った、にぁ。もっと、うんまいもんが食いたい、にぁ、にぁ。

おらが寝ていると、夜明けに、ココココ、ココココ、コケコッコー。

うるさい、にぁ。

おらの朝寝、じゃますがんは、どこだ。

ココココ、ココココ。

と、いうとるぞ。あーん。どこだ、どこだ?

ココだというから、おら、行って見た、にぁ。ニワトリ小屋だ。

このニワトリだ、にぁ。

コケコッコー。

ニワトリめ。毎朝、おらの朝寝をじゃまするがんは、許さんぞ。

朝は、静かに寝るもんだ。にぁ、にぁ、にぁーご。

おらが言い聞かせても、ニワトリは聞かね。

ココココ、ココココココ。

黙れ。にぁーご。おらは、にらみつけたぞ。それでも、

ココココ、ココココ。

いうこときかねえ気だな。そんなら、おら、ニワトリ食いたくなった、にぁ。

ニワトリは、バタバタして、足2本で、いいあんばいにネズミより逃げるのおっそいにぁ。食うぞ、食うぞ。

ケッコー、ケッコーいうすけ、食ってやったにぁ。

そんでネズミより、でっこくて、うんまい、にぁ。

おら、食った、食った、にぁ。腹いっぺになった、にぁ。

うんまいから、もっともっと食いたくなった、にぁ。

与作んちの、ニワトリ、もっともっと捕った、にぁ。

もっともっと食った、にぁ。

全部食った。ああ、うまかった。

これで、明日の朝はゆっくり寝ていられるわい。

おらは、すやすや。すやすや。寝とったぞ。

朝になっても、すやすや・・・・

ココココ、ココココ、コケコッコー。

なんじゃまた起こされた。

朝は、静かに寝るもんだ、にぁ、にぁ。

おらの朝寝をじゃまするがんは、どこだ?

与作んちのニワトリは、きのう、みんな食ったぞ。どこだ。

ココココココ、ココココココ。

ココだというから、行って見た。

となりの家じゃ。隣の二ワトリ小屋で鳴いとるぞ。

うるさい、静かにしろ。にぁーご。

おらが、にらみつけても、見向きもしない。

ココココ、ココココ。

黙らんと食うぞ。おらがいうと、

ケッコー、ケッコー。

おお、そうか。

それならばと、おらは食ったぞ。食った。腹いっぱい食ったぞ。

そんで、毎日、隣んちも、そのまた隣んちもニワトリ、捕りに行ったにぁ。

おら、腹いっぺになって、また、食いたくなったにぁ。

いっぺえ食ったら、おら、あたまよくなったぞ。

朝、起こされねえよに、晩げのうちに食っとけば、朝、ゆっくり寝てられっぞ。

おらは晩げのうちに食うことにした。

そうしてよ、毎晩、村でニワトリ狩りしていた、にゃー。

あるとき、ばあさんが与作と話してた、にぁ。

「三毛がニワトリ食うすけ、今に化け猫になるぞ、はよ、川に捨てねばなんね。」

おら、ばあさん、おっかね。だども、憎っくくなった、にぁ。

おら、ばあさん、食いたくなった、にぁ。ばあさん、年とって、杖ついて、3本足でよ、ニワトリより逃げるの、おっせえ、にぁ。

そんで、ケッコーも言わんで、おらこと、にらんだ、にぁ。

おら、ばあさん、食った、にぁ。ばあさん、ニワトリより、でっこくて、食うのに三ぃ晩かかった、にぁ。

そんで、うまけりゃいいが、ばあさん、骨と皮ばっかのもんで、ちーともうまかねえ。おらの腹に入っても、なんじゃ、まだ動いとるぞ。

うう、おら、苦しくなった、・・・ううう・・・にぁ、にぁ・・・腹いたくなった。

そんで、もごもごしとると、おらの手と足も、もぞもぞしてきおったぞ。

なんじゃこれは? おらのくびも顔も、もぞもぞしてきおったぞ。

なんじゃ、なんじゃ。なんじゃー。にあー。

おらが叫ぶと、おらは、ばあさんと合体して、ばあさんに乗っ取られてしもうたんじゃ。おらは、ばあさんに化けてしもた、にあー、あーあー。

そんで、おら、ばあさんになってしもて、にぁ。ばあさんは、おらを入れたまま、らくらくして、うちに帰った、にぁ、にぁー、あー。

「与作、今かえった。」

「おお、ばあさん、おつかれだったの。」

「いやあ、なんだか、急に元気になったわい。」

「そういえば、ばあさん、背がのびて、体が大きくなっているの。若返っているの。どうしたんじゃ。」

「実家でごっつぉになったで。」

「そりゃよかったな。」

「ところで、三毛にぁー子の姿が見えないが?」

「ああ、ばあさん、でかけるまえに、留守の間になにかあるといけないから家のまわりに山芋まいとけといっただろう。そんで、山芋たっぷり。すりおろしてまいたんじゃ。そのあとからかの。三毛がいなくなってしもうたんじゃ。」

そうだ、山芋だ。おらは、気がついたぞ。山芋を、ばあさんに食べさせればいいんだ。

おらは、ばあさんのからだの中から、大声を出した。

「山芋はからだにいいからの、おらも山芋食べようかの。」

与作は、ドンブリいっぱいの山芋を持ってきた。

「ほい、ばあさん、いっぱい食べれや。」

ばあさんは、もたもたしていたが、おらは、ばあさんの内側から手を伸ばした。ドンブリをつかんで、一気に山芋をばあさんの口に流し込んだ。

「ぎゃあー、かゆい。」

ばあさんは叫び出した。

「かゆかゆかゆー。かゆーい。」

ばあさんの、手も口も、のども、かゆかゆになった。

かゆかゆかゆー、げぼげぼげぼ・・

ばあさんは、おらを吐きだした。

「にゃあー。」

「なんだ、三毛にぁ―子。お前は、こんなとこに、いたのか。」

与作はおらを見つけていった。

おらは、山芋まみれで、体中が、かゆかゆになっていたから、与作にかまわず、川に走った。ザブーン。飛び込んだ。

川がおらのからだについた山芋を洗ってくれた。やれやれ。

ところが、岸に上がろうとすると、川の流れが急だった。

おらはどんどん川に流された。

どんぶらこっこ、にぁ、にぁ、にぁ。

どんぶらこっこ、にぁ、にぁ、にぁ。

おらは、ばあさんをやっつけて食ってやったつもりだったけんど、結局、ばあさんから、川に捨てられてしもたんじゃ、にぁー。にゃー、にゃあー。

おしまい

令和5年 弥生 桜が花開こうとする日

本作品 越後おとぎ話第24話 

「化け三毛にゃー子の語り」

箱庭劇場 2023年7月1日収録              

作・朗読     楯よう子

出演 

   ばあさん    干支ねずみ    

   与作      Muggsie made in Korea

   ニワトリ    手作り鍋つかみ

友情出演

   三毛にゃー子 リサラーソン

   ネズミ    干支トラ 他

 

種本  「化け猫退治」

     新潟のむかし話  こわくてふるえる話 

     新潟県学校図書館協議会編2000年

     朗読動画収録 2020年5月15日

https://www.youtube.com/watch?v=OfSHBY6spHs                                                                

Blog 「化け猫の生成」

令和2年皐月 大雨・雷・洪水注意報の夜・・

https://yuukyuujyou.hatenablog.com/entry/2020/05/20/184745

 

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